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願掛短冊流風





「アスランさんっ」

「なんだ?シン」

此処は甲板、余り人が来ない場所でありアスランはよくこの場所で海を眺めるのが日課になっていた。

「あんたまたシけた顔して…」

まったく…と溜息をつくシン。その態度に苦笑するアスラン、"また"という事は自分はしょっちゅうシけた顔をしているのであろうか?そんなつもりではないんだけど、とアスランは思う。

「なんだシン?俺に何か用があるんじゃないのか?」

「あっそうだ!これ。」

そう言って彼が差し出したのは

「紙?」

「短冊ですよ、た・ん・ざ・く」

「タンザク?」

「……アンタもしかして………短冊って何かわかってますよね?」

「えっ……いや、その……」

知らないと答えた。正直いきなり真っさらな紙を出され短冊です、と言われても何の事かわからない。

「はぁぁぁ!?知らないのかよ?」

「えっ…?」

「あんたもしかして今日が何の日かわかってんのかよ!?」

「今日は……えっと…」

知りません………

アスランはしっくりくっきり答えた。シンは呆れすぎたのか頭を押さえ俯いている。

なんでこんなに常識離れしてるんだ?

目の前の上官はとにかく軍の事や最低限必要な事などは知ってはいるが、自分の事とか些細なイベントなどはまるっきりわかっていない。前の5月5日の子供の日も知らなかったのだ。

「ふっまさしく箱庭娘ってとこか……」

「へっ?」

「まぁいいや、隊長。今日は七夕なんです」

「タナバタ?」

全くもって無垢なアスランに七夕を少し理解して貰ったのは それから30分過ぎたこと……




「って事です!!わかりました!?つうか、もう難癖付けないで下さい!!」

「えっでも……」

「そんな夢のない事言ってたら彦星と織り姫が隕石落としてきますよ!!」

「そっそうなのか?」



シンが説明をするとアスランは

「彦星と織り姫は宇宙空間で窒息死しないのか?」

とか言うからシンは彦星達は星だと説明すると

「惑星なのかっ!人じゃないのか?星がそんな昼ドラみたいな事をしてるのかっ!?」

とかどこの頭のいいキテレツ君だよ、とか思うほどの科学的ツッコミをするので無理矢理に話を終わらした。

「隕石はちょっとヤバイな」

そしてすぐ信じる。

冗談なのだがアスランはすぐに人の言うことを信じてしまう。

そういう所はどこか可愛いのだが余りいいとは思えない。

シンはアスランに潜かに恋をしていたりする。だから悪い奴らに騙されたりしたら…と心配なのだ。

「んじゃ、さっき言ったようにこの短冊に願い事書いちゃってください」

そう言って短冊とペンを差し出す。

ルナマリアとメイリンが何処からか持ってきた笹に皆が願い事を書いた短冊を吊しているのだ。

「願い事……なぁ」

「なんでも良いですよ?」

アスランの事だからきっと、戦争が終わりますように。とか書くのだろう。

「んっと………よし」

何か思い付いたのだろう、いきなりペンを持ち直し床にしゃがみ込んだ。

「……」

甲板だから机が無いのは当たり前だけどアスランはそれを気にせず床に紙をひき、膝を着きながら黙々と書いていく。

その姿がとても子供っぽくてシンはつい自分が微笑んでいた事に自覚していなかった。

「書けた!」

ニコッと笑いながらシンにアスランは短冊を差し出す。

「……えっ。」

「なんか変かな?」

シンは少し驚いてしまった。アスランが書いた短冊には


織り姫と彦星がずっと同じ想いでありますように。


「戦争の事書くと思った。」

「あーそうだな。でも戦争は俺達が終わらせなくちゃ駄目だろう?」

そう言って悲しく微笑む彼にシンは少し胸が苦しくなった。

「だからせめて織り姫と彦星は少しでも幸せになれたらとか思って」

「そんなんだったら普通、織り姫と彦星が一緒にいられますようにとかあったんじゃ……」

「そんなに都合よくいかないだろ?」

夢があるのかないのか…ロマンチストなのかただの天然なのか…シンはまた頭が痛くなってきた。

「シンはどんな願い事書いたんだ?」

そう言ってシンの手に握られている短冊に目を向けるアスラン。

「はいぃ!?えっ、えっとこれはまだ……書いてないです」

「嘘だ。字が見えたぞ?」

ギクッ

「えぇっと、これは失敗であります!!」

「気になるな~俺のを見たんだからシンのも見せろ!!」

そう言って短冊に手を伸ばす。それを避けるシン。

「嫌であります!」

必死に取られないように腕を伸ばすがアスランの方が少し背が高い。

「くそっ!諦めろシン!!」

そう言って見事なジャンプで短冊に手を触れさせる

「のわぁぁ!させるかぁぁ!!」

シンは最後の抵抗に腕を重いっきり振った。

「「あっ」」

振り過ぎたのか短冊はシンの手から離れヒラヒラと宙を舞う。

「あぁ!!」

叫んだのはアスランだ。短冊が海に落ちたのだ。

「ふう…」

シンは一息つく。

(見られなくてよかった)

「ずるいぞお前だけ見て!一体何が書いてあったんだ?」

「秘密ですよ!企業秘密!さっ笹にかけにいきましょう!」

「むぅ……」











アスランさんの本当の笑顔が見れますように




海面漂う願いの紙は波に揺れながら長い旅に出る。









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