僕の背中にいる君は
「ほらぁ、泣くなよ…キラ」
そう言ってアスランはキラの目から流れる涙をそっと拭く。
「だって、だって!」
泣き止むどころかよけい泣くキラにアスランはどうしよかと本気で悩んだ。
キラが何故泣いてるかというと、今日は日曜日。学校が休みなため二人で近くの森に探検に出かけたのだ。
人口の森とはいえ、かなり険しく奥まで行くとさすがにアスランは危険だと思い、引き返そうとキラに言った。
「え~もうちょっと行って見ようよ。」
好奇心旺盛なキラはそう言うとさらに奥へと進んで行った。
奥に行くのは嫌だが一人残されるほうが嫌なのでアスランも後に続く。
「キラー!もう暗くなりそうだよ。帰ろう!」
明るかった空もだんだんと暗くなってきた。このコペルニクスは人工都市なのですべては人によって造られている。空も一見太陽の光に見えるが人によって明暗調整されているため一度暗くなってくるとすぐに暗くなるのである。
「ちぇっ。」
残念そうに舌を鳴らすキラ。その表情をアスランは苦笑しながらも帰れるという事に安心を覚えた。
「せっかく休みなのに~ちょっとぐらい暗くなっても大丈夫だよ」
「危ないだろ!人工電灯でも見えない時だってあるんだから!」
「でもさぁ……あっ!!」
その時キラは足元が崖端の脆い土の上とは気付かず歩いていた。近日降った雨のせいで余計崩れやすかったのだ。
「きら!!」
「いったぁ~」
少し頭を打ったのかキラは数分気を失っていたらしい。上を見上げると先程いた場所が見えた。そんなに高くはないが無事ではすまなさそうな高さだ。
「あれ、アスランは?」
上を見上げてもアスランはいなかった。ふと視線を下に下げるとそこにアスランがいた。
「!!!!あっアスラン!!」
キラはすぐにアスランの傍に駆け付けた。アスランの額から血が流れていた。額だけでなく肘や膝、腕も変な方向に曲がっていた。
「アスラン!あすらん!!」
キラは涙を流しながらアスランを呼び続けた。自分がたいして怪我をしてないに対しアスランの怪我は酷かった。アスランが庇ったのだ。
「んっ……きら?」
アスランはそっと目を開けキラの名を呼んだ。キラはアスランの無事を確認するとすぐに抱き着いた。
「うぇっ、ごっごめんなさい、ヒック、ごめんなさい。」
アスランは何故キラが泣いてるのかわからず今に至るのである。
「だって、だって!僕のせいでアスランが!アスランがぁぁ!」
さらに、ぎゅっと抱き着くキラに対し身体がズキッと痛んだ。そういえば先程から頭が痛く左腕が全く動かないのだ。
「どうしよう。アスラン立てる?痛くない?」
キラはアスランの身体を労りながらもそう問い掛ける。
いつもならアスランがキラの事を心配するのだが今のアスランは力が入らずあまり考える事が出来なかった。
「早く帰って病院行かなきゃ!」
そういいながらキラはアスランを抱き上げおぶる体制をとった。
「キラ!?」
「いいから乗って!」
戸惑うアスランにキラは涙声でそう言った。アスランは真剣なキラの言葉に甘え、キラ背中に乗った。
「ハァ、ハァ、もうちょっとで出口だ!」
キラは息も絶え絶えで言った。アスランは呆然としながらもうんと返事をした。
キラがこんなに力持ちだったなんて。
自分よりも少し背の低い弟のようなキラが自分をおぶって森を出るなんて信られなかった。
「アスラン、大丈夫?痛くない?」
キラは同じことばかり聞いてくるのでアスランも毎回
「大丈夫だよ。キラこそ大丈夫か?」
と答えていた。キラだって怪我をしているのに、普通逆じゃないのか?アスランはそう思った。
森を出てすぐに家に向かおうとしたがその前に病院が見えたのでキラは急ぎ病院に向かった。
その後電話をして二人の母が駆け付けて来た。
アスランはその時やっと自分がかなりの大怪我をしているのに気付き、キラは疲れ果て倒れてしまいカリダにレノアも二人を叱る事を忘れその場は大混乱になった。
「あの時は大変だったね。」
キラは自分の背中におぶっている人物に言った。
「まあな。キラが行きなり倒れて熱だして本当ビックリした。無理しておぶらなくてもよかったのに。」
「腕の骨を折れた事を気付かずにいた君に言われたくないよ。」
額に肘、膝、包帯を巻き首から三角巾をかけた小さな少年を思い出しキラは苦笑する。
「ごめんね。あの時、僕がアスランの言う事をちゃんと聞いてれば」
「別にいいさ。たいした怪我じゃなかったんだし、キラもそれ以来明るいうちに家に帰ってたし」
そう言いながらアスランは眠たそうにキラの肩に顔を埋める。
怪我をしたままMSに乗り、治りかけていた傷が開き医師からは安静にしとけと言われたが、アスランはジャスティスの調整をしようと無理して起き上がったのだ。
「眠たい?寝ていいよ。僕は元気だから」
ジャスティスの前で苦しそうにしていたアスランをキラは見つけ部屋までおぶって行く最中、キラは昔の事を思い出した。
「……………」
「アスラン?」
アスランからの返事はなかった。どうやら眠ったらしい。
「大丈夫。もう絶対、倒れたりしないから。アスランを泣かせたりしないから。」
「きら?きらぁ?僕なんかをおぶって無理するから……」
腕に三角巾をかけた包帯だらけの幼馴染みが泣いていた。
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