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「なぁ~」
「ん~」
「おーい」
「んー」
生半可な返事をするヤマトに太一は内心ため息をつく。
どうにかこの体制から逃れられないのか。
太一はヤマトの上に仰向けになっていた。というか、ヤマトが太一を後ろから抱きしめたまま寝転んでしまったのだ。
「あのさ、喉が渇いたんだけど」
「んー」
駄目だこいつ、と太一はまたため息をつく。どうやら半分は夢の中にお邪魔しているようだ。
さて、どうしようかなと太一は考えるのだが、どうも寝ているくせにヤマトの腕の力は健在で、さらに腕が服の上ならいいのだが服の中で抱きしめてくれている。
太一が言えば腹が圧迫されている感じだ。
「ヤーマート、腕はなせー」
「んーいやだ」
こいつ、本気で剥ぎ取るぞ。と思ったのだが、仰向けの体制は意外に力が入りにくい。
だが、喉が渇いたのにヤマトのせいで飲めないなんてムカつく。
太一は一度深呼吸をして……一気に体を起こした。
ヤマトの腕が腹に食い込むというかめり込んで胃が圧迫されたが、その痛みに耐え、起き上がる事ができた。
「あっはっは!現役スポーツマンの腹筋をなめんなよ!」
完全に起き上がり、太一は自分のスポーツバッグからミネラルウォーターを取り出した。
蓋を開けてそれを口に含み喉を潤す。
その間にヤマトは起きたらしく「太一?」と自身の腕から抜け出した太一をボー然と見る。
「お前、腕力ありすぎなんだよ」
腹を摩り、太一がヤマトが寝転がっているベッドに座った。
同時にまたヤマトは太一を後ろから抱きしめる。
(せっかく抜け出したのに)
と思いながらも用が済んだので抵抗はせずにヤマトに体を預ける。
「なぁ、後ろから抱きしめんの好きなのか?」
いつも、部屋でいる時はたいていヤマトは後ろから太一に抱き着く。太一は後ろにもたれられるので好きだが。
「いや、別に。抱きしめるのは好きなんだけど……」
太一を自分の腕の中に閉じ込めておきたい。その心からいつも抱きしめてしまうのだが、実は後ろからなのには理由があった。
「後ろからだと……蹴られないし、腹も殴られないから一石二鳥だなって」
一瞬、部屋の空気が凍りついた。
なんというムードぶち壊しなのだろうか。まあ、嘘を言うよりは本当の事を言ってくれるのは有り難い……が、太一はムカついたのだ。
「太いっぐぁっ!!」
「残念だったな、後ろだからって安全区域だと思うなよ」
太一はしてやったりと不敵な笑みを浮かべる。太一はおもいっきり後頭部をヤマトの額にぶつけたのだ。
ヤマトは痛がって片手を額に当て呻いている……のだが、もう片手はやはり抱きしめたまま。
「痛ってぇ、やっぱお前はバイオレンスな奴だよ」
「お前のせいだろ?自覚しろ」
額を押さえていた手をまた太一の服の中へと持っていく。
徐々に手は上へとはい上がり、胸の辺りで落ち着いた。やれやれだと太一も呆れるが、もう何も言わない事にする。その顔は赤かった。
そうしてヤマトは顔を太一の首筋に埋め、眼を閉じる。
ドクン、ドクンと一定の速度で鳴る心臓の音を聞きながら。
「あのさ、ヤマト?」
されてる本人は顔を真っ赤にして後ろの人間を呼ぶが。
「ん~?」
とまた生半可な返事。
服はほぼ捲くられているわ、ヤマトが太一にもたれ掛かっているわ、少し辛い体制なのだが、本格的なヤマトの寝息が聞こえてきたら……。
「マジ?ずっとこのままですか?」
ヤマトが近いライブのせいで忙しい事を知っている。
だから寝させてやりたいのは内心思うのだが。
「寝るなら普通に寝ろって、ヤマト、起きろよ!」
辛い体制の中、太一はヤマトに叫んだが……結局はヤマトが起きたのは夕飯の時間をとっくに過ぎた後だった。
もちろん、太一は一睡もしていない。
リラックスリズム
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