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おまえの舌はどうかしている
作っているのは自分だが、どこか傍観者な自分もいる。
というか、現実逃避をヤマトは引き起こしていた。
久しぶりに太一もヤマトも休みだという日曜、昼飯を石田宅にて食べる事になった。
太一の注文はチキンカレー。
鶏肉や他の材料はあるが、カレー粉がない為二人で買いに行ったのはいいが。
「ヤマト、はいこれ」と言われ渡されたのは『超!!激辛』とでかく書かれたカレー。
激辛を通り越した『超!!』の文字に引っ掛かった。
なんだ!?超!!って激辛よりも遥かに上回る辛さなのか!!
何の冗談だろう、と太一を見れば既にレジに進んでいた。
冗談ではなく本気で買うつもりだ。もちろんヤマトはそんな恐ろしいモノを食べたくない。
「たっ太一!ちょっと待て!何だよこれ!!」
「カレー粉」
「超!!激辛って」
「ああ、最近売り出したらしいぜ。そこのメーカーの社長ってさ本場インドのカレーを目指してんだって」
で極めたのがこの超!!激辛カレー。と食べるのが楽しみ!みたいな顔をして言う太一にヤマトは一瞬だが目眩がした。
何を極めたと言うのだその社長は。
「でも、俺さぁ、激辛どころか辛口すらまともに食べた事ないんだけど」
「ヤマトって甘い物嫌いだろ?じゃちょうどいいじゃん」
甘い物が嫌いだからって辛い物が好きな訳じゃない。
寧ろヤマトはほろ苦い味(世に言う大人の味)を好んで食べる方だ。辛い物は甘口以上辛口以下範囲でしか食べない。
「でっでも超って辛すぎだろ」
「……わかったよ」
わかってくれたのか――太一はカレー粉が並んでいる棚に向かっていった。
だが、『超!!激辛』カレーはかごの中のままだった。
「おい、太一。これ………」
「ヤマト、いきなりはやっぱヤマトにはキツイもんな。これ混ぜようぜ」
甘口と中辛を混ぜてほど好い辛さにする家庭は少なくはないだろう。それを応用しようと太一は提案した。
『激辛』と書かれたカレーで。
「太一……」
「んじゃ、買おうぜ。腹減ったなぁ」
超!!激辛に激辛を足してニで割っても激辛は激辛でしかない。
何ら解決してはいない事にヤマトは心で涙した。
「でっできたけど」
超!!激辛と激辛の中途半端激辛カレー。香りからしてその辛さは凄まじいとわかる。
勿論だが量は二人分。晩飯にこのカレーは嫌過ぎる、いや、今食べる事すら地獄だ。
太一には内緒だが、作ってる最中、できるだけ辛くないように牛乳を多めには足したが、それも無駄のようだ。
「サンキュー!めっちゃ美味そう!!」
「ああ、そうだな、めっちゃ辛そうだな。って何してんだ太一!!?」
うんざりとした顔からさらに顔を青くするヤマト。
太一がタバスコをカレーにぶち込んでいるからだ。
「オプション、オプション」
「なっなんだ!?罰ゲームか!?己に厳しく接しているのかっ!!?」
「こないださ、ミミちゃんに美味しいカレーの食べ方を教わったんだ」
『もしもし?太一さーん、ミミね、新しいカレーの美味しい食べ方を開発したんです!それは、カレーにタバスコと生クリームとチョコチップをかけて食べたら美味しいんです!太一さんも試して見てね♪』
「生クリームとチョコチップは気持ち悪いからさぁ、醤油と一味唐辛子入れたんだ。そしたら美味いんだぜ、これまた。俺も最近はミミちゃんに影響されてきたな~。ミミちゃんって絶対味覚オンチだと思ってたのに」
いや、タバスコしか合っていないだろ。それは。
そうツッコミたかったヤマトだが、タバスコの上に辛口醤油、一味唐辛子を入れていく太一に何も言えなかった。
「家じゃヒカリは辛いの苦手だから超!!激辛は食えなかったんだよな。やっぱ持つべき友は一緒に飯を食えるヤマトだよ」
赤色に変色したカレーを一口食べて幸せそうな顔をする太一。
それを眺め、ヤマトはハハハ、と冷や汗を流しながらカレーを一口食べた。
「からぁああっっ!!」
数日後、選ばれし子供たちにとっては大事な日。
最愛の弟、タケルが石田家に泊まりに来た日、ヤマトは残っているカレー粉を全て使ってカレーを作った。
弟と、父……二人にこの二度と食べたくないカレーを始末してもらう為に。
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